月別アーカイブ: 4月, 2020

film0189: LIFEBOAT (1944)

April 06 2020 13:25

LIFEBOAT
邦題「救命艇」
 
映画レビューサイト総合偏差値:3.42
国内映画レビューサイト偏差値:3.23
海外映画レビューサイト偏差値:3.79
だい評点:★★
USA
1944年1月12日公開
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:タルーラ・バンクヘッド、ジョン・ホディアック etc
製作・配給:20thセンチュリーFOX
◎NYFCC主演女優賞
 
【本編の内容が限りなく少ないあらすじ】
イギリスに向かう客船が炎上、沈没した。辛うじてただ一人救命ボートで脱出した旅行ライターのコニーは、救命艇に向かって泳いでくる人影を見つける。救命艇に辿り着いた男は機関士のコバックで、船はナチスの攻撃を受けたという。
 
 
【だいレビュー(ネタバレ有)】
ヒッチコック作品には珍しく、
主演女優が若くて可愛いコじゃなく、おばさん!!
しかもめっちゃ性格悪い役!
新機軸だな。
 
そのへんもWWⅡ真っ只中の世情の影響あるのかね。
実際逞しさが要求される話だし、
戦時中はそういう部分も求められるだろうし。
うん、戦争は映画作りにも影を落とすのね。
 
でもさ、
戦時中だからプロパガンダ的な要素は仕方ないにしても、
結局、ナチスは騙し討ちしてくるからブッコロ。
みたいな感情で大団円。
ってのがなんだかなー。
 
もうちょっとウィリー個人の内面を掘り下げて、
ウィリーはナチ崇拝者だから…
っていう感じにしてくれれば個人の問題になるんだけど、
まぁプロパガンダ的にはステレオタイプにしなきゃなのは、わかる。
 
でも、『海の沈黙』を観た後だからそのへんにやり切れなさが、ある。
 
 
ヒッチの作品自体は娯楽作として大好きなんだけど、
だからこそ、重めなシチュエーションには向かないのかな、って。
人物全体が軽いんだよな。
行動原理が希薄というか。
 
こんな過酷なサバイバルの中で、
それぞれの「どうしても生きたい理由」が見えてこないと、
やっぱり感情移入は難しい。
 
だから、
ガスの手術や死も、
大嵐も、
ドイツ補給艦に収容されそうなのも、
もちろんハラハラしたりはあるけど、
けどね…って感じ。
 
どうしても生きたい、っていう執念らしいものがないのに、
急に恋心だけは芽生え始めて、
うーん。
 
 
最後も、
まぁ軍事的な考えとして補給艦を叩くのは正義なんだけど、
日本人の立場としては、
別に連合軍、ナチスどっちにも思い入れがあるわけじゃないので、
戦艦同士の交戦じゃなく一方的な砲撃が行われてるのも何だかなぁ、とか。
 
作品としてダメなわけじゃないんだけど、
国内のレビューサイトの点数と、海外のサイトの点数に相当な乖離があるのを見てわかる通り、
やっぱり日本人には心から共感できない作りなんだろな。
 
日本人でも、
戦争や、戦後の残滓を経験した世代だったらまたいろいろあるのかもだけど。
 
俺らには永遠に持てない感覚だから、難しいね。



Categories: 38歳から始めるシネフィルへの道。

film0188: DEUX HOMMES DANS MANHATTAN (1959)

April 03 2020 11:18

DEUX HOMMES DANS MANHATTAN
邦題「マンハッタンの二人の男」
 
映画レビューサイト総合偏差値:3.59
国内映画レビューサイト偏差値:3.78
海外映画レビューサイト偏差値:3.21
だい評点:★★★
フランス
1959年10月16日公開
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:ジャン=ピエール・メルヴィル、ピエール・グラッセ etc
製作:ベルフォート・フィルム、アルテフィルム
配給:コロンビア
 
【本編の内容が限りなく少ないあらすじ】
12月23日、ニューヨークの国連総会では目立った議題もなく、国連への新加盟国の承認決議だけが行われていた。しかし、フランスただ1ヶ国だけが予告なく欠席し、各国の記者たちはこぞってそのニュースを打電したが、誰一人としてフランスの国連代表ブルティエの行方を知る者はなく…。 
 
【だいレビュー(ネタバレ有)】
おシャレすぎの嵐!!!
 
光と影の協調された映像。
前編に流れるジャズブルースの音色。
 
かっこよすぎるぅぅぅぅぅぅ!!!!!(涙)
 
リバーヒルソフトの往年の推理アドベンチャーゲーム、J・B・ハロルドのシリーズは絶対これから影響受けてるよな。
特に『マンハッタン・レクイエム』。
 
 
正直、ストーリーは単純。
だって、失踪した外交官を探したら、愛人の部屋で死んでました。
だけだもんなぁ。
陰謀もどんでん返しも何もない。
 
でもな。
 
おシャレさだけで幸せになれる!!!!!!
 
おシャレ映画は正義だった。
 
もうオープニングからシャレオツ感しかなくて、
今まで観た映画の中で2大好きオープニング映像だわ。
もう1作は『タイピスト!』。
両方フランス映画だなー。
 
 
この前観た『海の沈黙』が良すぎたから、メルヴィル監督観ようと思った一環だけど、
いい意味で全然作風が違うというか。
 
好きな監督1位に躍り出たまである。
まだまだ観たいなー。



Categories: 38歳から始めるシネフィルへの道。

film0187: LE CORBEAU (1943)

April 03 2020 09:49

LE CORBEAU
邦題「密告」
 
映画レビューサイト総合偏差値:3.75
国内映画レビューサイト偏差値:3.67
海外映画レビューサイト偏差値:3.90
だい評点:★★★
フランス
1943年9月28日公開
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
出演:ピエール・フレネー、ジネット・ルクレール etc
製作:コンチネンタルフィルム
配給:トビスフィルム
 
【本編の内容が限りなく少ないあらすじ】
フランスのとある町、民家の庭で心配そうに佇む3人の老婆がいた。民家から出てきたのは産婦人科のレミ・ジェルマン医師。手を洗う彼に老婆が尋ねると、母親は助かったが子供はダメだったと言う。その頃、彼の勤めるサン・ロバンの市民病院では、13番ベッドの患者がベッドを替えてほしいと訴えており…。
 
 
【だいレビュー(ネタバレ有)】
「フランスのヒッチコック」クルーゾー作品2本目の鑑賞!
ホントにそう言われてるかは知らない!
大学の頃、TSUTAYAにあった「恐怖の報酬」のレンタルビデオのパッケージにそう書いてた!
だからたぶん本当!
 
でもね。
本作を観る限りでは、テイストはわりと対極!
 
事件の中で生まれる恋。
みたいなのはヒッチでもお決まりのパターンだけど、
ヒッチ作品のやつはだいたい陽気で爽やか!
 
一方で本作。
 
情  !  念  !
 
 
恐怖さえ感じるデニーズの愛。
サイコすぎるヴォルゼ院長の愛。
 
このドロドロ感こそフランス映画の華!!!!!!
 
 
でもなレミ、
女抱いといてその後の態度は何やねん…
中途半端な気持ちで抱くなや!!!!
 
出さない手紙という謎のウジウジといい、
レミにどこまでも漂うカス男感。
カラスの怪文書にいまいち怒りを覚えきれないのはたぶんそのせいだな。
 
 
犯人が最終盤まで特定できない、
というサスペンス的面白さは満足なんだけど、
ただでさえキャラが希薄だったうえに、結果救われなかったローラが哀しい。
もうちょっとキャラ立ちさせてあげたかったよ。。。
 
そして圧巻のエンド。
13番患者の母親によって、遂に成し遂げられた復讐!
我が子を殺した相手への復讐を終えた老婆が静かにヴォルゼ邸を出て行く。
 
「息子のカミソリは1回しか使ってない。もっと使ってあげなきゃ」
って言って手に持っていたカミソリが、ヴォルゼの死体のもとに…。
 
こえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
 
 
子を殺されると、母は悪魔にも鬼神にもなるのですね。
 
 
一方で、子殺しの汚名を着せられながらも、
最後には自分の子を産むようドニーズに言ったレミ。
この映画のテーマはそこにある。



Categories: 38歳から始めるシネフィルへの道。

film0186: LES MISÉRABLES (2019)

April 02 2020 23:39

LES MISÉRABLES
邦題「レ・ミゼラブル」
 
映画レビューサイト総合偏差値:3.82
国内映画レビューサイト偏差値:3.84
海外映画レビューサイト偏差値:3.79
だい評点:★★★★
フランス
2019年5月15日公開(カンヌ映画祭)
監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ etc
製作:スラブフィルム
配給:ル・パクテ
 
【本編の内容が限りなく少ないあらすじ】
パリ郊外のモンフェルメイユの警察署に転勤してきたステファン。迎えに来たクリスとグワダという二人の同僚からは、この地域は数年前に自警団によってコカインの売人たちが一掃されたが、なお複雑な状況が残っていると聞かされる。
 
 
【だいレビュー(ネタバレ有)】
すごい映画を観た!!!!!!
フランスのスラムの圧倒的なリアル!
 
気軽に軽犯罪に手を染めるアフリカ系住民の子供たち。
舐められたら抑止できなくなるから、荒っぽくならざるを得ない警察。
両方のバランスを取らなければいけないスラム住民の顔役。
さらにはサーカスでやってくるルーマニア系住民。
 
移民国家の複雑な事情だよなぁ。
 
どうしても貧富の差ができやすいうえに、
同一出自でコミュニティを作るから、火薬庫になりやすい。
日本では実感を持てない環境。
 
暴動で、警察だけではなく、
“市長”や反コカイン団といった「自分たちの顔役」までも襲撃する子供たち。
そこにあるのは、ストレスの発散?ルサンチマン?
 
 
そしてこの映画の最も秀逸なのがラストシーン。
「悪い草も悪い人間もいない。育てる人間が悪いだけだ」
 
ただ一人だけ自分をかばってくれたステファン。
ただ一人だけ自分の身体を気遣ってくれたステファン。
ただ一人だけロマの暴走を止めてくれたステファン。
 
ステファンのやり方でイッサは変わる?
それを観る側に考えさせるアプローチ、
それぞれに解釈が生まれるから、すき。
 
育てる人間によって、
いい草にもいい人間にもできるかもしれないけど、
でもね、
そのための育て方に正解はないんですよ。
 
優しくするのが正解な場合もある。
厳しくするのが正解な場合もある。
ステファンのやり方が何かを生むのか、
クリスのやり方が何かを防ぐのか、
法的な云々は別としてね、
その善し悪しを論じるのはね、それぞれの価値観でしかないんですよね。
 
 
でもそんな社会でもね、
あのスラムのように、同民族同士ですら信じ合えていない社会でもね、
冒頭の場面のように、サッカーで1つになってる瞬間が事実としてあるんですよね。
エンバペ?デンベレ?グリーズマン?ジルー?
民族なんて、出自なんて関係ないってみんな体感してんじゃん!
 
どうやったら、普段からそれが当たり前になるんだろね。
育てる人間がね、
変わらなきゃなんですよ。
変わりたいね。



Categories: 38歳から始めるシネフィルへの道。

film0185: YOUNG AND INNOCENT (1937)

April 01 2020 09:42

YOUNG AND INNOCENT
邦題「第3逃亡者」
 
映画レビューサイト総合偏差値:3.19
国内映画レビューサイト偏差値:3.12
海外映画レビューサイト偏差値:3.33
だい評点:★★★
UK
1937年11月公開
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ノヴァ・ピルビーム、デリック・デ・マーニー etc
製作:ゴーモン・ブリティッシュ
配給:GFD
 
【本編の内容が限りなく少ないあらすじ】
女優クリスティンの死体とその凶器のベルトが浜辺に打ち上げられているのをシナリオライターのロバートが偶然発見した。警察を呼びに行くロバートの後ろ姿を見た通りがかりの女性たちは、ロバートが現場から逃走するのを見たと証言し…。
 
 
【だいレビュー(ネタバレ有)】
善意の第3者が犯罪に巻き込まれて犯人扱い→逃走。
つまり。
 
いつものヒッチコック!!!!
 
 
本筋に関係ないトラブルまで起こって命からがら脱出。
つまり。
 
いつものヒッチコック!!!!
 
 
もはや様式美だよなぁ。
正直、炭鉱の地崩れのシーンとか無くてもいいシーンだけど、
とりあえず何かを起こして定期的にハラハラさせる。
 
状況はどんどん悪くなっていって絶体絶命だけど、
最後の最後に大逆転でハッピーエンド。
 
やってることはだいたい同じなんだけど、
それでも毎回きちんと楽しめる安定感。
 
時代劇並みの安心感あるわ。
 
 
で、本作に関して言うと、
とりあえず軽い!
主人公が軽すぎて共感できない!
 
「無実だから捕まっても何とかなるよ」
ってんなら最初から逃げんなやぁぁぁぁぁ!!!!
 
逃げるのはまだいい(よくないけど)。
潜伏してるのに外にゴミ捨てんなぁぁぁぁ!!!!
屋内にでさえ痕跡残しちゃあかん場面で、
窓からゴミ放り投げるやついる?
バカなの?ねぇバカなの??
 
全く必死さが感じられないから、
そもそものストーリーの必然性が薄くなってる。
それがこの作品のいまいち感の根源だよなぁ。。
 
 
最後の大団円に向けたホールのシーンはヒッチの真骨頂よね。
「早く気付け!早くぅぅぅ!!」
っていう感情で5分以上息を飲んで観るからカタルシスがすごい。
でも演奏おかしくなった時点で普通はドラマーのほう見るけどな。。
 
「急病人は放っとけない!わたしガールスカウトやってたから!」
が単なる二人の出会いだけかと思ったら、
 
最後のシーンに繋がってるのかよ!!!!!!!!!!!
 
この構成だけでご飯おかわりできるわ。
だけども、んな事言うと、
「じゃあやってみて」って言わないでねベイベ。



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