七大陸周遊記~第2章~ (6)馬岱は斬らない。

September 02 2003 17:53

(この文章は、2003年9月の日記を2015年4月6日に改題・改編・加筆したものです)
 
 
陽も傾いて、ますます寂しい色になったトドワラを、
来た時と同じ桟橋から後にする。
 
果て。
涯て。
 
そりゃあオホーツクに消ゆでも、あんな事件起こるよなぁ。
朽ちた木々が、その骸だけは何かの想いを遺すように留まる地。
人が、最後に行き着く涯て、
そういう場所があるとしたら、
こういう風景なんだろうな。
 
 
そんな中でぼくらは、
たくさんの想い出を抱いて、
ぼくらを待つ船に乗り込んで、
明日へと向けて帰って行く。
 
無情だな。
今日と明日を繋ぐ数直線上に生きる人間には、
トドワラは彼岸なのかもしれないな。
 
 
 
此岸へ帰った頃にはもう陽は低くなって、この後の旅路を急がせる。
 
風蓮湖の半島側には、道路の両側の藪で草を食む鹿がたくさん。
車が通りかかると、
警戒というよりは不思議そうな目でこっちを見るのがかわいい。
道路そばまで出てた鹿たちも、藪に逃げてこっちを眺めてる。かわいい。
 
 
ヤウシュベツ川は、曇天ながらも僅かに射し込む夕陽を受けて輝いている。
この景色、好きだなあ。
たぶん俺、水が好きなんだろうな。
泳げないけど。
 
 
 
風蓮湖の南岸で立ち寄った、道の駅「スワン44ねむろ」で、
春国岱という絶景スポットがあるという情報をキャッチしたので、
道すがら行けそうな場所だし行ってみることにする。
 
駐車場前の橋では数羽の海鳥がのんびり羽を休めてる。

 
未舗装の駐車場の片隅から延びる木道を歩いて、
湿地の中を奥まで進む。

根室十景らしい。
まあ、天気も天気だし、時間も時間だしで、
他に人がいないのでものすごい寂寥感。
トドワラは人がけっこういた分だけ生気があったな~、
と感じるレベルの無常感。
弱い人なら鬱になりそう。
 
木道を進むことしばし。
おおおおおおお!!!!!!!!!
これはプチ・トドワラ!!!!!
 
野付以外でもこんな風景があるとは!
にわかにテンションが上がるだい。
 
しかし、整備されていないのか、
それともつい最近の悪天候のせいなのか、
倒木で木道の何箇所かが塞がれているので、
時間も時間ということもあり、
無理に奥まで探検するのを断念。
っていうか、これは天気いい日にまた来るわ。
思わぬ掘り出しもの発見。
 
 
 
今日は、根室の市街地にほど近い、
「ゲストハウス・ケルン」に宿を取ってある。
 
いろいろ検索した結果、圧倒的に価格が安かったので予約したのだけれど、
口コミによると、宿の主人が圧倒的に曲者らしく、
少しでも騒いだ客は容赦なく追い出すのだとかなんとか。

宿のホームページによると、

当宿舎は根室駅より3.4kmと離れているため、
来て頂くお客様は、根室市内の騒がしい宿、2食付きと、素泊りダメ等々、
ケルンは素泊りOK、飲食物の持込OK、
そして静かな宿を求めてこられるお客様第一ですので、
安宿としての利用ビジネスマン、建設工事関係の方、国内旅行手配のお客様はお断りしています。
「静かに泊まって頂けるお客様の利用」のみとさせて頂きます。
 
チェックインは20時までに済まされて門限は21時ですので、
深夜飲食されに市内の夜の街に出られる方には不向きな宿です。

もはやこの時点でクセしか感じない。
 
ま、まあ俺は騒ぐタイプじゃないし大丈夫よね…!
と戦々恐々としつつ、チェックインのため宿に入ってみると。
 
 
「@;&#$%”!+<*~|~|%#”!!!!!!!」
突然の怒声。
 
見ると、デーハーなナオンを連れたチンピラ風の男がレセプションカウンターへ向かってまくし立てている。
レセプションに立っている係員は微動だにせず、一通り聞き終わった後、

「今日は満室だと言っているだろう。迷惑だ。帰ってくれ」
 
と無表情のまま静かに言い放った。
こ…これが噂の主人だな!!!!!!!
 
しつこく食い下がるチンピラ風を退屈そうな目で見ながら、俺の存在に気付いた主人。
さあ、さっさとチェックインしろ、と目で合図してくる。
 
ひぃ。
急がないと…殺されるっっっ。
 
 
「よ…予約しているだいです」
 
それを聞き、無言で部屋のキーを差し出す主人。
俺がキーを受け取ると、
 
「このホテルは、静かに過ごして頂ける方のみにお泊まりいただいています。部屋でも静かに過ごしてください」
 
それだけを告げると、再びチンピラ風の方に向き直り、
「本日は部屋はありません」
 
激昂するチンピラ風の怒声を背に、
いたたまれなくなってとりあえず荷物を置きに部屋に入るだい。
部屋は、古い狭めのビジネスホテルといった様相で、
14インチの小さなTVにシングルベッド、ユニットバスといったごく普通の部屋。
まあ、静かにただ寝るだけなら必要にして充分かな。
 
 
少し休んでエントランスに戻ると、
チンピラ風カップルは諦め顔で出て行く所だった。
いったいどんな争いが繰り広げられたのだろうか…
 
 
先程の様子を見ても、門限にだけは絶対に遅れるわけにはいかない。
遅れたらたぶん容赦なく朝まで閉め出すぞこの宿。
と思ったワタクシは、せめて納沙布岬だけは見ておこうと足早に出発。
曇りと霧とが相俟って、全然何も見えんかった…
SHIT!
 
SHITって書いたら、USAのグーグル様に引っ掛からなくなるかしら。
 
 
 
宿の隣の喫茶店で夕食を取り、
21時頃には就寝。
 
こういう宿に泊まるとめっちゃ健康的になるな!
 
 
今日の運転距離:約340km


Categories: 旅。

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